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抜き打ちの…
頭髪検査に、制服検査。
体育館に集められた生徒達が…列になって。
ひとりひとり、その出番を…待つ。
面白いのは、この時ばかりは…
女子は捲り上げていたスカートを、膝丈ギリギリまで下げて。
男子は、腰履きしていたズボンを…これでもかって位に…ハイウェストにする。
いつから真面目っこになったんだっていう…
妙な、光景。
緊張しているのは、生徒達に他ならず…
先生方も。
矢代先生も、例外なく…。
腕組みしながら、イライラを……募らせていた 。
堂々としていたのは……早瀬くらいだっただろうか?
要領の良さを、こういう時にまで…発揮してしまう。
生活指導の亀山先生が、足の先から全身をじろじろと見るから。
女子は心のなかで…悲鳴を上げていた。
「……利央。髪の毛がくるくるしているが…これは、パーマじゃないか?」
「昨日三つ編みして寝たからです。」
……いや、もう一人…強者がいたっけ。
「毎日三つ編みしてんのかあ~?」
隣りで見ている矢代先生…、イライラMAX!
「センセー、利央、美容師目指してるんスよ。三つ編み、上手くないですか?」
早瀬はケロっとした顔して…
そんなことを言う。
進路決定の大事な…時期。
それが絡んでしまうと、先生方も…太刀打ち出来ないようで…。
「紛らわしいから、明日からやめなさい。」
軽く、注意のみで…パスされる。
「稲守!」
「えっ…!」
私は…スカートも、髪も大丈夫なはずだったのに…。
名前を呼ぶその声が…
いつもとは、違う。
「耳の穴…、ピアスか?」
……しまった。
しんちゃんと…穴の開けっこしていたんだった。
「紗羽ちゃんのは、今塞いでる最中みたいですよ?この前言ってたし。」
「……早瀬……。」
早瀬の饒舌なフォローは…、よもや、教師ゴロシ。
「そうなのか、稲守?」
「……はい。」
ちょっと…罪悪感。
矢代先生は、いよいよ口元を…ひきつらせていた。
早瀬の番が……回ってくる。
「早瀬。この茶色い髪は?」
「地毛です。」
スパッと言い切るけれど…。
「んな訳あるかあーっ!!」
スパーンっと、頭を叩いたのは…矢代先生。
「今すぐ帰って、黒くしてこい!」
「ヘイヘイ。」
「ヘイじゃねーよ!」
「はーい。」
ちっとも悪びれなく…
怒られ役を買って出てしまうあたりが。
……早瀬らしい。
この日、1度帰宅したはずの早瀬は、驚くくらい早く…学校に戻ってきた。
髪の毛は…真っ黒!
「そこのドラッグストアでスプレー買って、今、トイレで染めてきた。」
ズル賢さと、行動力は…ピカ一。
だけどその日、さすがに…部活はできなくて。
結局…サボるハメに。
後にペナルティーを貰ってしまったことは…言うまでもない。


