給食の時間…
子供たちと一緒のテーブルで、高校生たちも…
持参した弁当を食べる。
早く食べ終えた彼らは、時折子供たちにちょっかいだしながらも…、他の学生と、親しげに会話を繰り広げていた。
「昨日『カメ』にスカート丈注意されてさあ。どこ見てんのってカンジなんだけど。」
「分かる分かる、見る目がやらしーよね!」
………。
可哀想に、亀山先生。
どの時代の女子にも、そうとられてしまうのね……。
思わず、うんうん、と……頷きそうになる。
「ねえ、あなた達は、みんな同じクラスなの?」
うちのクラスに入っているのは、男女二人ずつ。
みんな、結構仲良さげだ。
「そうです、みんな同じ。」
「へー…。担任の先生は?」
「久本先生。」
「………。ひさもと………ああ、数学の?!」
「そうそう!ってか、センセーも知ってるんですか?」
敬語とタメ語を交えながら…
彼らは話に食いついてくる。
「うん。なつかしーな…。あとは?誰に習ってるの?」
共通の話題が1つでもあるのが…救いだ。
ツルツル肌の高校生。
恐らく…流行も、興味のある分野も、全く違うだろうから。
「あとはー……ゆってぃーとか?キョドっててマジウケる。」
「………?」
ゆってぃー?
ワカチコ?
「現国は海藤で…」
「カイトウ……。」
「顔面凶器みたいなのいるじゃん?」
んーと……。…誰?
「わかんないや。時代は変わったんだねえ…。」
10年も経てば…そりゃあそうか。
私立校だから職員の異動はないにせよ…、当時は、公立校を定年したおじいちゃん先生も多く
て…。
そのほとんどは、退職したか、中には亡くなった先生もいるって…聞いてはいた。
「あと、矢代先生とか?」
「矢代先生!」
つい、声が大きくなった。
「ヤバイよね、そろそろ…。」
「……エ。ヤバイって…?」
「メタボ。あれ、相当キテる。そのくせ筋肉だって言い張るから…尚更目が行くし。」
「……ぶっ……!確かに…!」
大好きな先生のことを…
こうやって、今の生徒たちから語られるのって…なんだか、新鮮だ。
筋肉だなんて、よく言ったもんだ。
当時からすでに…プヨプヨしてたのに!
辛口の高校生達が、矢代先生に親しみを持っていることは…
その口調から、読み取れる。
「………………。」
こうなって来ると。
……聞いてみたくなる。
「ねえ、早瀬先生っているでしょ?」
……早瀬のこと。
「あー…、えーじ先生?」
「そうそう、えーじ先生。」
下の名前で呼ばれてるんだ…。
みんな名字で呼んでたから、不思議なカンジ。
「アイツはアホだね。」
これまで黙っていた男子生徒が…話に絡んでくる。
「アホじゃないよー、イケメンじゃん!つか、センセー狙いいっぱいいるし。」
「クールだけど、優しいよねえー。」
女子生徒の…反論。
「いや、騙されてる。ありゃあ、バカだ。」


