「………。…何してんの、私……。」
ピュウっと北風が吹き抜ける中を…
竹熊手をもって、園庭に流れる川…『ビオトープ』の掃除をしている…私。
「寒い……。この大量の落ち葉で焼き芋して食べたい…。……いも…。」
少しでも温かさを求めて。
要らぬ空想に耽る。
「………手伝うよ。」
いつのまにか…
紘子先生が隣にいて。
竹熊手を…奪い取った。
「……気にするなって言いたいけど…。紗羽先生は少し気にした方がいいかもねー…。」
器用に葉っぱを掬い上げて、紘子先生は…ポツリと呟く。
「……おばちゃん達の戯言だよ、あんなの。私も何回絡まれたかわかんないけど…もう慣れたもんよ。彼氏募集中ですっていい続けたら…いよいよ話題にもされなくなった。まあ、年齢的に…仕方ないじゃない?それが嫌だったらさー…、ちゃんと自信をもって恋愛してることを主張すればいーんだよ。それがわかれば、さほど興味もなくなって言われなくなる。」
「そーゆーもんですかね…。」
「そーゆーもんよ。」
「……。……まだ言えそうにもないですけどね。」
「そうでしょうねえ…。」
「…………。……難しいです、女って。自分がわかりません。」
「悩め。独身の醍醐味だ。……結婚してから後悔するようじゃ…遅いんだから。」
「………説得力あります。」
「まあねー、……同じように…説教してやったからね。」
「……誰に…ですか?」
「幼馴染み。うだうだしてるからさー……。」
紘子先生の長い髪が…。
ふわり、と舞い上がった。
どこを見ているのか…
ちょっとだけ、泣きそうな顔。
「………男の人…ですか。」
「……うん。」
「………好き……だったんですね。」
「………。どうだろ…?嫌いではなかったかな。」
「結婚…反対はしなかったんですか?」
「……だって。反対したところで…どうなる?選ぶのは…結局、自分自身なんだから。人に言われてどうにかなるくらいなら…そんだけの気持ちってことじゃない?」
「…………。」
「だけど……博打打ってみれば良かったって…思うよ。」
「…………………。………紘子先生…、焼き芋、食べたくないですか?」
「エ 。今の話の流れでそうくる?」
「……腹が減っては戦はできぬ。」
「……。……戦するんかい。」
「……博打も。…打てません。」
「……ふーん。……じゃあ、落ち葉集めて焼き芋大会するか。年長さん、芋掘りするって言ってたし。」
「いいですね。便乗しましょうか?」
「……よしきた。」


