グラウンドの地面は…雨のせいで少しだけ、ぬかるんでいた。
薄い雲が…広がっていて。
「微妙な天気ですね。大降りにならないといいけど……。」
ちらほらと、不安視する声が…聞こえてきた。
「……先生、本部用のテント、ここでいいですか?」
「…え。あ…、はいっ!」
「……って、紗羽先生じゃん。」
「……え…?あれ…?早瀬…??」
な…、
何でここに…早瀬が?
「毎年、テント張りの指示係で体育教官が呼び出されてんだ。テントの脚、やたら多いから…高校の職員でないと、わかんないんだって。」
「へえ……、そうなんだ。」
「設営箇所、あとは…どこ?運んでもらうにも、場所がわかんない。」
「……ええーと……。」
私は設営図を広げて…
周囲の光景との位置確認を行う。
母校とはいえ、何せ初めてのことだから…
正確な場所が、把握できない。
「……?見せて。」
紙を覗きに、早瀬が……顔を寄せる。
髪の毛が、頬に触れて…くすぐったい。
「………。なんか早瀬、いい匂いする…。」
「……匂わないでよ、意識するじゃん。」
「……………。……ごめん。」
「や、謝らなくても…。」
「…ごめん、その紙…早瀬が持ってていいよ。私じゃ役に立ちそうにないし。」
「……え?」
「……じゃあ、私、万国旗張り手伝ってくるから!」
早瀬が変なこと言うから……
こっちが意識しちゃったじゃない。
これが…、紘子先生の言っていた、初恋の呪縛…?
私は既に…
囚われてしまっているのだろうか……。


