慣れないサンダルに、足元をとられそうになりながら…
歩いていく。
そんな私に…気づいているのか、早瀬は歩幅を合わせて、ゆっくり、ゆっくりと……
ペースを落とす。
車通りも殆んどなく、
煌々と光る街灯の光が……まるでスポットライトみたいに、眩しく…照らしつける。
延びた影が……思いの外、二人の距離の近さを浮き彫りにさせていていた。
「……………。」
大通りの交差点。
信号機が……赤の点滅をひたすら…繰り返す。
不意に見上げた早瀬の瞳をも…、赤く、ゆらゆらとさせていた。
眠る街……。
静かな…夏の夜。
「墓参り…、行った?」
どんな会話を選ぼうかって思ったのに。
まさか、そう来るとは思わなくて…
「行ったよ。」
一言で…返事してしまう。
「ここも、8月盆なんだな?」
「ここもってことは…、そっちも?」
あれ……?
じゃあ、早瀬は…?
「バレたか…。うん、ご先祖様には申し訳ないけど…。つい、こっちを優先しちゃった。」
「………。そっか…、地元、遠いしね。帰省しないの?」
「………。帰省か…。なんか、変な会話だな?俺としてはこっちに帰省してきたような気分なのに、実は…そうじゃない。そんだけ濃かったのかなあ…、高校生活3年間は。」
「…………。」
「なーんか、みんな変わってなくて…安心した。」
「……そう?」
「ん。けど、『お前も結婚したのかよ!』…て、何度言ったかな…。いや、マジ所帯持ちの多さにビビった。俺は浦島太郎か…。」
「音信不通にしたのが悪い。みんな…報告したかったと思うよ?」
「………。ごめん。……そっか…。行きたかったな、結婚式。」
「…………。」
「恒生は、寺でしたんだろ?嫁さん美人だって話じゃん。」
「うん、そうらしい。」
「みっちゃんは、やっぱ…、白のウエディング?」
「……あたり!」
「……あいつは…、まだ先になりそーだな。まずは相手探さないと。」
「………。誰のこと?」
「しんちゃん♪」
「………。」
「最近、ふられたんだって~?あいつもなかなか報われない奴…。」
「………。」
振られたって…、ソレ、早瀬に言ったの…?
「………けっこー…一途だったんだな。」
「…………!」
「……なんて…、人のこと、言えないか。」
早瀬は…ピタリと足を止めて。
私の方へと…振り返る。


