おばあちゃんの声がだんだん大きくなって、あたしは耳を塞いだ。すると今度はぶーぶーっと、浩人のカバンの中で携帯電話が震えた。きっと、浩人の浮気相手が鳴らしているに違いない。
浩人はあたしが浮気に気づいていないと思っている。浩人は単純でバカだから。でも、あたしは浩人を責めたりしない。泣き喚いて、すがりつけば、男は冷める。
あたしはお母さんのようにはならない。
あまりない両親の記憶のうちの一つは、お母さんがお父さんを責める声と、お父さんが必死にお母さんを宥める姿だ。宥めれば宥めるほどお母さんは怒り、そのうち、お父さんはぷいっといなくなってしまう。それを繰り返すうちにお父さんはだんだん家へ帰らなくなった。
お父さんを責めたから、お父さんを受け入れてあげなかったから、お母さんは捨てられた。
だからあたしは、お母さんのようにはならない。
浩人はあたしが浮気に気づいていないと思っている。浩人は単純でバカだから。でも、あたしは浩人を責めたりしない。泣き喚いて、すがりつけば、男は冷める。
あたしはお母さんのようにはならない。
あまりない両親の記憶のうちの一つは、お母さんがお父さんを責める声と、お父さんが必死にお母さんを宥める姿だ。宥めれば宥めるほどお母さんは怒り、そのうち、お父さんはぷいっといなくなってしまう。それを繰り返すうちにお父さんはだんだん家へ帰らなくなった。
お父さんを責めたから、お父さんを受け入れてあげなかったから、お母さんは捨てられた。
だからあたしは、お母さんのようにはならない。



