Hair cuts

あたしは、あたしだけを必要としてくれる誰かに飢えていた。長い間、ずっと。

あたしはおじいちゃんとおばちゃんと暮らしている。お父さんとお母さんが離婚して、それぞれ新しい家庭を持ったから、あぶれたあたしは母方の祖父母の家に預けられた。両親とは長いこと会っていない。あたしを置いて再婚したいとお母さんがこの家を出て行ったとき、おじいちゃんはお母さんを勘当してしまった。だからお母さんは家の敷居を跨げない。

でもあたしは知っている。おばあちゃんがこっそりお母さんと連絡を取っていることも、そうするように仕向けているのがおじいちゃんだと言うことも。なんだかんだ言いながら、二人ともお母さんを忘れていない。むしろ、忘れられたくないのだろう。

(あんたが上手くやってんならいいの。子供犠牲にまでして結婚したんだから幸せにならねぇと。うん、なぁんも。愛華のことなら心配ねぇ。あの子なら大丈夫。そりゃ、そうさぁ。ばあちゃん、あんたの親だもの。子供の幸せを願わねぇ親なんていねぇ。親はいつだって子供の幸せばかりを考えているんだぁ)

偶然聞いてしまったおばあちゃんとお母さんの電話。

子供の幸せを願わない親はいない。親はいつだって子供の幸せばかりを考えている。

おばあちゃんは泣きながらそう繰り返していた。

なら、あたしの幸せは誰が考えてくれているのだろう?

離れていても親はいつも子供の幸せばかりを考えているなんて嘘だ。生んだ子供を犠牲にしても自分の幸福を願う親だっている。逆に、自分を捨てた親の幸せを願う子供だっているのだ。

例えば、あたしや浩人みたいに。