昼過ぎ、私は少しだけ会社に顔を出し、珍しくオフィスにいたシンコ先生にグアムでのことを報告すると、ついでに辞職の挨拶もすませた。実はこのグアムでの仕事が、東京でする最後の仕事だったのだ。
送迎会を開いてやるというシンコ先生の気持は丁寧に辞退した。美容室で働いていたかつての仲間はほとんどいなくなり、スタイリスト仲間は時間に不規則でとても集まることなどできないということもわかっていた。それに、涙を呑んで別れを惜しむほど親しい付き合いをした人間もいなかった。
電車に揺られ、流れ行く景色を見つめながら、私はもう二度とこの街で暮らすことはないのだろうと思っていた。
十九歳で上京してから、十一年が過ぎようとしていた。もうビルの高さや、季節ごとに街を飾るイルミネーションの美しさに感嘆の声をあげることも、ガイドブック片手にお洒落なカフェを探したり、すれ違った有名人に驚いたりすることもなくなっていたけれど、私はいつまでたってもここで生まれた人間のように振舞うことができなかった。
とはいえ、私はこの街が嫌いではなかった。この街で私はたくさんのものを得、吸収したのだから。けれど、同時に大切な人も失った。
一人はジル。そして、もう一人は…。
送迎会を開いてやるというシンコ先生の気持は丁寧に辞退した。美容室で働いていたかつての仲間はほとんどいなくなり、スタイリスト仲間は時間に不規則でとても集まることなどできないということもわかっていた。それに、涙を呑んで別れを惜しむほど親しい付き合いをした人間もいなかった。
電車に揺られ、流れ行く景色を見つめながら、私はもう二度とこの街で暮らすことはないのだろうと思っていた。
十九歳で上京してから、十一年が過ぎようとしていた。もうビルの高さや、季節ごとに街を飾るイルミネーションの美しさに感嘆の声をあげることも、ガイドブック片手にお洒落なカフェを探したり、すれ違った有名人に驚いたりすることもなくなっていたけれど、私はいつまでたってもここで生まれた人間のように振舞うことができなかった。
とはいえ、私はこの街が嫌いではなかった。この街で私はたくさんのものを得、吸収したのだから。けれど、同時に大切な人も失った。
一人はジル。そして、もう一人は…。



