しばらく沈黙が続いた。けど、無常にも鳴り響いた携帯電話の音が、その沈黙を破った。
(うん、打ち上げの帰り。そう、タツヤんとこだよ。いい曲が出来たっていうから聞きに来た。当たり前だろう…)
ジルは携帯電話を押さえながら声を潜めたが、狭いワンルームでそんなことをしても意味が無かった。私には電話口で声を張り上げるジルの新しい恋人の声まで聞こえていたのだから。
「それじゃ、俺、行くわ」
電話を切った後、ジルは気まずそうな顔を向けた。
「そうしてくれると助かる。私も、あと数時間後には日本をたたなくちゃいけないし」
「じゃあな」
ジルは手を差し伸べた。
この五年間、自分たちはいい関係を築いた。そして、綺麗に別れ、互いに新たな道へ出発をしよう!とでも言いたげな、ジルの満足そうな顔に私は反吐がでそうだったが、黙って手を握り返した。
かつて、あんなにも私を頼りにし、求め、愛してくれた手は、まるで他人のそれのようにごつごつと冷たかった。もう二度と私を受け入れることはない。むしろ、全て忘れてくれと私を拒絶していた。
結局、封筒は返さなかった。最後の最後になって、ジルが名残惜しそうな目で封筒を見つめたのを私は見逃さなかったからだ。
恋の終わりは、いつだって、あっけない。
(うん、打ち上げの帰り。そう、タツヤんとこだよ。いい曲が出来たっていうから聞きに来た。当たり前だろう…)
ジルは携帯電話を押さえながら声を潜めたが、狭いワンルームでそんなことをしても意味が無かった。私には電話口で声を張り上げるジルの新しい恋人の声まで聞こえていたのだから。
「それじゃ、俺、行くわ」
電話を切った後、ジルは気まずそうな顔を向けた。
「そうしてくれると助かる。私も、あと数時間後には日本をたたなくちゃいけないし」
「じゃあな」
ジルは手を差し伸べた。
この五年間、自分たちはいい関係を築いた。そして、綺麗に別れ、互いに新たな道へ出発をしよう!とでも言いたげな、ジルの満足そうな顔に私は反吐がでそうだったが、黙って手を握り返した。
かつて、あんなにも私を頼りにし、求め、愛してくれた手は、まるで他人のそれのようにごつごつと冷たかった。もう二度と私を受け入れることはない。むしろ、全て忘れてくれと私を拒絶していた。
結局、封筒は返さなかった。最後の最後になって、ジルが名残惜しそうな目で封筒を見つめたのを私は見逃さなかったからだ。
恋の終わりは、いつだって、あっけない。



