Hair cuts

夏休みであって、夏休みではない。去年の夏はよかった。進路も決まって、毎日遊びまくっていた高校最後の夏休みが懐かしい。

冷蔵庫のジュースを補充しながら、ふぅっとため息をついた。曇りガラスに映る自分の顔が五歳くらい老けて見える。やべぇ、パックしたほうがいいかな。昨日からできはじめた頬のニキビに人差し指で触れると、ざらりとした。くそ、手まで荒れていやがる。ウェーブ用のローションに負けたのだろう。

専門学生がこんなに忙しいとは思わなかった。補習があるのはまず仕方ないとして、休み中にメイクや着付やネイルの試験が目白押しなのが気に食わない。試験をうけるためには練習が不可欠で、そのため、結局普段と同じように登下校しなきゃけないならなんで終業式なんかしたんだよと思う。

おまけに、もうすぐインターンだ。一週間、決められた美容室で実習をする。先輩曰く、配属される店によっては、体のいい雑用係が来たとばかりこき使われ、接客はおろか、洗濯や掃除に追われ、表に出てくることさえままならないらしい。美容師じゃなくて洗濯屋のインターンだったと、その先輩は振り返った。

そのうえ、俺はコンビニでのアルバイトも始めたので拍車をかけて忙しかった。基本、夕方五時から夜の十時までの夕方勤務。けれど、夏休み中はたまにだけど夜勤も頼まれたりして、そういう時は寝ないで学校へ行く。

正直めちゃめちゃきつい。けど、やめようとは思わない。早く金を貯めて車を買いたかったからだ。