電話はなかなか鳴り止まなかった。それで私はそれが両親からであると確信し、渋々受話器をあげた。

「もしも…」

「ちょっと、あんた！何で帰って来ても電話よこさないの！朝から何度かけてもでないし！」

いきなり母の怒鳴り声で始まった電話に、私はうんざりしながらも頭の中で素早く言い訳を整理した。今朝帰って来たばかりでとても疲れていたこと。電話は深く眠りすぎていたせいか（実は呼び出し音を小さく設定もしてある）まったく気づかなかったということ。それから、昼ころに起きて職場に挨拶へ行きようやく今帰ってきたと言うことなどを。

でも、それらを言う前に、

「愛華ちゃん夫婦、死んじゃったんだよ！」

母は叫んだ。

「浩人君が愛華ちゃん殺して、自殺したって！遊里君も大怪我して…」

懐かしい仲間の名前が、母の口から次々と飛び出した。けれど、あまりにも唐突で、突拍子もないその内容と彼らの名前の接点が見つからない。だから、私は、だた「はぁ」と間の抜けた返事をすることしかできなかった。