*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………まだ習い始めて日が浅うございますので、お耳汚しかとは存じますが………。


恥ずかしながら、一曲、弾かせていただきます」








そう言って、汀はふぅ、と息を吐いて呼吸をととのえると、筝の十三の弦を爪弾きはじめた。






鮮やかな筝の音が几帳の陰から流れ出し、塗籠の中へ、御簾の外へと響き渡る。








「ほぅ…………。


なんとも見事な…………」








芳正が何度も頷きながら嘆息した。





兼親も、その驚くほどの上達ぶりに、静かに目を剥いた。






琴を弾き終えた汀は、「お聞き苦しゅうございましたでしょうが」と呟く。






しかし芳正は、はたはたと手を鳴らした。








「いやいや、とんでもない。


なんとも美しい音色でしたぞ。



いやぁ、六の君さま、あなたは素晴らしい姫君だ」








「まぁ、そのようなお世辞を………。


わたくしなど、まだまだ未熟でございますのに………」








汀は鈴の転がるような声で、ころころと笑った。