*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯が塗籠の中に戻り、汀は妻戸を閉めてその前に屏風を動かしてきた。




汀の耳にはやはり何も聞こえなかったが、灯の言葉を信じて、御簾を下ろし几帳の陰に身を隠す。





しばらくすると、ばたばたと駆ける足音が聞こえてきた。






「姫さま!」






御簾をくぐって入って来たのは、露草だった。






「なぁんだ、露草だったの」






汀はほっとしたように几帳から出ようとしたのだが。






「いっ、いけません、姫さま!!」






やけに狼狽した様子の露草に、几帳の陰へと連れ戻される。







「………どうしたの? 露草。


そんなに慌てて………」







「おっ、お父君が、お客さまを連れておいででございます。


と、とにかく、ここに隠れていらっしゃってくださいませ」







「お客さま………?」








汀は首を傾げながらも、露草の言葉に従った。