*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

(大勢の下女や童たちに傅かれて、阿呆のような振る舞いばかりして。


とんでもない馬鹿だと思っていたが…………。



それほど間抜けでもないようだ。


いや、むしろーーー)







軽く目を瞠りながら考える灯に、汀がふんわりと笑いかける。








「ね? だから、これまで通り、蘇芳丸と呼んでもいいでしょう?」








汀はにっこりと首を傾げて笑った。





そして、近くの植え込みのもとに落ちていた小枝を拾い上げ、くるくる振り回しながら灯を振り返る。








「さっ、蘇芳丸!!


今からこの枝を投げるわよ。


さぁ、とってきてちょうだい!」








にこにこしながら小枝を庭の隅に放り投げた汀を見て、灯はがくりと項垂れた。








「…………あほか」








(………やっぱり、とんでもない馬鹿だ)