*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

にこりと笑った汀は、灯の手をとった。







「さ。遊びましょ、蘇芳丸」






「……………」







灯は呆れて言葉も出ない。







「…………お前なぁ……。


今さっき俺の名を聞いたばかりだろうが。



なぜまた、そんな犬ころのような呼び方をする」






「あら、だって」







汀は少し悪戯そうな顔で灯を見上げる。







「蘇芳丸、あなた。


こんな京のど真ん中で、本当の名を大声で呼ばれて、大丈夫なの?



姿を見られなくても、誰かがその名を耳にしたら…………?


身元がばれて、困るのではないの?」








その言葉に、灯は目を瞠った。







(…………このお姫さん)







汀の顔を見つめながら考える。