*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………だからって、犬ころの名で呼ぶことはないだろう」






「じゃあ、あなたの名前は、いったいなんなの?


火影童子、ってのは通り名でしょ?」







六の君は青年の目の前に立ち、浅葱の瞳でじっと見上げる。






青年はそれをしばらく黙って見つめていたが、六の君が静かに待っているので、とうとう口を開いた。







「…………アカリ」







青年が答えた、その瞬間。




ひときわ強い風が吹き、青年の髪が舞い踊った。





篝火の色に燃え立つようにゆらりと揺れる、その美しい髪を、六の君は息を呑んで見つめる。







「ーーーーーあかり……?」







どこか茫然としたように繰り返した六の君に、青年が小さく頷きかける。







「…………灯火の、灯」






「…………そう。


灯、っていうの」







六の君は微笑んだ。