*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

青年を庭に連れ出した六の君は、わくわくとした様子で裸足のまま駆け回った。





そして、階の近くに佇んでいる蘇芳丸に向かって手を振る。







「さぁ、おいでおいで、蘇芳丸!」





「…………」







青年が腕を組んで高欄に寄りかかったままなので、六の君はさらに大きくぶんぶんと腕を振った。






「ほぉーら、こっちよ!

おいでー蘇芳丸!」





「………犬ころのように呼ぶな」






青年は不愉快そうに呟く。






「あら、だってあなた、似てるんだもの。


私が昔、飼っていた犬に」






六の君はけろりと答えた。






「………失礼な奴だな」






青年が呆れたように言う。






「仕方ないじゃない。


あなたが名乗ってくれないんだから。

私が勝手につけた名前で呼ぶしかないじゃないの」