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それから数日。
青年の口数はだんだんと増えていった。
人間嫌いの犬を手なずけることに成功したかような気がして、六の君は日々うきうきしている。
「ねぇねぇ、蘇芳丸!」
「…………」
「蘇芳丸ってば!」
「…………」
「すおーまろー?」
「………なんだよ」
これでも、初めのころに比べたら、信じがたいほどの進歩である。
「今日はとってもいいお天気よ。
空もとっても青いのよ」
「…………」
「ちょっと、庭に出て遊びましょ。
あなたの傷もだいぶいいし、少しくらい動いても大丈夫よね」
「…………」
「あんなに身軽な動きができたのに、なまってしまったらもったいないじゃない」
「…………」
「ね、ね、お庭に出ましょーよー」
「………わかったよ」
青年は結局、今日も根負けしてしまうのだった。



