*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

優しい月明かりに照らされながら、蕾をたわわにつけた桜の木の下で、言葉もなく見つめ合う。






時が止まったような静寂の中、灯はゆっくりと身を屈めた。





微かに開かれた桜色の唇が、真近に近づいてきた、その時。







「ーーーーーお二人さん。



お取り込み中、悪いがね」








唐突に降ってきた低い声に、二人はびくりと肩を震わせた。







「…………む、群雲」






汀の頬から慌てて手を離した灯が、背後に立つ姿を見上げた。






汀は目を丸くしてからにっこりと笑った。






「まぁ、群雲さん。


なんだか久しぶりね」






群雲は溜め息をついて灯の肩を叩く。







「灯。心中は重々お察しするが。



………こんな所で油を売っている場合じゃないぞ」







「………………」







「じき、夜が明ける。


この家の人々が起き出してきたら面倒だ。



早く戻るぞ」








「……………」






灯は何も言わず、汀の腕をとって立ち上がった。