*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「昨日までの私は、本当の私じゃなかったの。


汀という名を捨てて、新しく与えられた六の君という名で生きていた」







汀は遠くを見るような目をしてから、ゆっくりと目を閉じ、手を合わせる。



地中の髪に祈るような姿勢になった。







「でも、六の君とはもうさよならーーー。



これからはーーー自分の思う通りに生きて行くわ」






「思い通り、か………」






これまでもずいぶん好き勝手に行動していたように思うが。




汀の言う思い通りとは、いったいどんなことになってしまうのだろう。






一抹の不安を覚えつつ、灯の苦笑する。







(………どうせまた、俺は振り回されるんだろうな)







そうは思うが、離れられるはずがない。