*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

しばらくすると、汀は穴に土をかけて埋めはじめた。





それを手伝ってやりながら、灯が小さく訊ねる。






「…………切った髪に手を合わせるなんて、何を考えてるんだ」






「ふふふ、知りたい?」






にやりと笑いかけられて、灯が口をへの字に曲げる。






「…………別に」





「まぁ、知りたいくせに」





「別に知りたくない」





「うそよ、気になるんでしょ?」






くすくすと笑いを洩らして、汀は灯の顔を覗き込んだ。







「あのね………これは、今までの私」






細い指で、地に埋められた髪を指す。






灯はこくりと頷いた。







「父上の顔色をうかがって、父上の言いなりになっていた私………六の君」






微笑む汀の瞳を見つめながら、灯は心の内で思う。






(…………言いなり、か。


そんなたまじゃないだろうに)






貴族の姫君としては破格の振る舞いの数々を思い出すとどうにも可笑しかったが、灯は何も言わずに黙って聞いていた。