*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………は?


じゃあ、なんでこんなに伸ばしてたんだ」






その視線は、切り落とされて地に散らばる、無数の長い黒髪に向けられている。





しかし汀はこだわりのない様子で、落ちた髪の房を掻き集めながら言った。







「父上の邸に引き取られた時にね。


私の髪は肩よりも少し長いくらいしかなくって。



蒼ざめた父上が、『女の美しさは髪の長さで決まるのだから、切らないで伸ばせ』っておっしゃったの。



だから伸ばしてただけよ」






「……………そうか」






言われてみれば、活発で全く落ち着きのない汀に、動きを妨げるような長い髪など不釣り合いであった。







髪を集め終わった汀は、今度は庭に穴を掘り始めた。






「蘇芳丸、ちょっと手伝って」





言われて灯は素直に従った。