*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

右手でさっと刀を抜き取り、左手に残った鞘は地に打ち捨てる。




鞘から抜かれた刀身が、細い月の明かりにきらりと煌めいた。





汀の口許がくすりと微笑む。






「………おい?」





動揺したような灯の声を背に受けたが、汀は答えない。






そして、枝に絡まってしまった髪の房を、左手でぐいと掴むと。







ーーーーー汀は、一寸の躊躇いもなく、小刀で髪を断ち切った。






流れるような一瞬の出来事で、灯には止める術もなかった。






汀はにっこりと笑って灯を振り向く。






「ーーーーーお、お前………」






灯はぽかんとした表情で汀を見つめた。