*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………お前のことだからな。


俺があの『蘇芳丸』だと知れたら、また同じような目に遭わされてしまうだろうと思って、黙っていた」






その言葉に汀が唇を尖らせる。






「まぁ、ひどい。


私を天災か何かのように言うのね」






「………俺にとっては、天災みたいなものだ」






灯は言いながら、内心噴き出してしまった。






(いつ起こるか、予測もできず。



遭遇しても避けることができない。



全く、とんだ天災だ、こいつはーーー)






黙ったまま笑いを押し殺している灯を、汀は不満そうに眺めていた。






そのとき、ふわりと風が吹いた。





腰までたゆたっている汀の長い髪が、温い風に舞い踊る。