*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

そのとき汀が、ふと気づいたように手を打った。






「そうだわ。


あの子犬があなただったのなら………」






「だから、犬じゃなくて狐だと」






「どうして自分が蘇芳丸だと、私に教えてくれなかったの?」






「……………」






「ねぇ、言ってくれればよかったのに。


私たちはずうっと昔から縁があったんだって………」






汀が覗き込んでくるので、灯は迷惑そうに顔を歪めてそっぽを向く。






「…………お前があのときの娘だということは、あの邸で初めて目が合った瞬間、すぐに分かった。



すごく驚いた」






「あら、そんなにすぐに分かっていたの」






(………そのおかげで油断して、いつもなら避けられるはずの矢を受けてしまったくらいだ)






灯はその時の自分を思い出して苦笑した。