*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

二人は並んで、遥かな夜空を仰ぐ。





月はじりじりと昇り、天心を過ぎて傾きつつあった。






灯はちらりと視線を動かし、竹藪のほうを見る。






「…………俺は疾風に拾われて、気がついたら白縫山で暮らしていた。



たまには都にでも行ってみようかと思って来てみたら、そこの裏山で、鹿獲りの罠にかかってしまった。


脚を怪我して歩けない上に、弱ったせいで狐の姿になってしまってな。



放っておけば治るかと思って、藪の中で寝ていたら………」






琥珀色の瞳が、今度は汀へと向けられる。





「………運悪く、とんでもないじゃじゃ馬に見つかってしまった」






「…………ま。それって、私のこと?」






汀は頬を膨らませてみせた。






「お前以外、誰がいる」






灯は目を細めて微笑んだ。