*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「まぁ、父親は普通の人間だったというが。



そんな母親の血を引いたせいか、俺は小さい頃は時折、狐に化けてしまってな。


それに、鼻や耳が他人より利くのも、その影響なのかもしれない」






「…………まぁ、そうなの」







さほど驚いた様子もなく、ふぅん、と首を傾げている汀を見て、灯は小さく笑った。






「………こんな話、初めてしたよ。



俺の母親のことを知っているのは、疾風と群雲だけなんだ」






「あら、じゃあ、村の皆も?」





「あぁ、知らない。


俺の姿が変化してしまった時は、群雲がいつも庇ってくれていた」





「へぇ………」






汀は群雲の温厚そうな顔を思い出し、なんとなく嬉しくなった。






「………あなたは、仲間に恵まれたのね」





「あぁ………」