*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

そんな汀の心中を察することなく、灯が言葉を続ける。






「………俺は物心ついた時には一人だったから、母親のことはよくは知らないんだが。



群雲の親父ーーー先代の白縫党頭領の疾風に聞くところによると、俺の母親は、妖狐だったらしい」






「…………ヨーコ?」






「………人名のように言うな。


妖狐だよ、妖狐。


白狐といってもいいが。



………まぁ、早い話が妖(あやかし)ーーー物の怪だな」






「…………妖」







汀は口を開けたまま反芻した。







(蘇芳丸のお母さまが、妖………。



まぁ、びっくりしちゃったわ)







確かに灯の髪は変わった色をしているが、汀自身の瞳の色のことを考え合わせれば、ただの特殊体質か突然変異に過ぎないと思っていたのだ。







「長い時を生きた真っ白な狐だったそうだ。


不思議な力を持っていて、人を化かしたりもしていたらしい」