*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯が庭石に腰かけ、汀にも座るよう手振りで示した。





汀は素直に従い、真横の灯の顔をじっと覗き込む。





もう一度苦笑いを浮かべて、灯は口を開いた。







「………怪我をしたり、疲れたりすると。



この姿ーーーヒトの姿から、狐の姿に変化した」






それを聞いて汀が目を丸くする。






「え………狐? 犬じゃなくて?」






その呟きを耳にして、灯は険しい表情になった。






「………断じて犬ではない。


あれを見て子犬などと思うのは、お前くらいだ」






「まぁ………」







汀は両手で口許を覆い、驚きの声を上げた。






(………あれはどう見ても犬だったけど。


残念ながら、近所の子たちも、犬って呼んでいたもの)






しかし、知らない方が幸せだ、ということもある。





そう考えた汀は、本人には真相を黙っておいてあげることにした。