*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

指先で愛でるように傷痕を撫でながら、汀がゆっくりと顔を上げた。






その白皙の相貌には、満開に咲き誇る桜花のような笑みが浮かんでいた。







「…………あなたが、蘇芳丸だったのね」






潤んだ声で言われ、灯は仕方なさそうに長い吐息を洩らした。








「………………」







「………ねぇ、そうなんでしょう?



あなたが、あの裏山の竹藪で怪我をしていた、子犬なんでしょう?」







灯は諦めたように苦笑する。







「…………あぁ、そうだよ」







袴を上げて腰紐を結ぶと、汀の求めることを語り始めた。







「………幼い頃の話だが。


俺は、ときどき、姿が変化してしまうことがあった」