*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「……………」






灯は口をへの字に曲げてそっぽを向く。




くすくすと笑い声を洩らしながら、汀は灯の手をとった。





唐突に手を触れられて、灯が面喰らったように眉を上げて汀を見下ろす。






汀はにっこりと笑って、繋いだ手をぎゅっと握りしめた。





その手をぶんぶんと振り、「さ、帰りましょ」と声をかける。






「私たちの家へーーー」





「………ああ」







庭を横切って外へ向かう途中、汀が「あ」と声を上げた。







「裏庭にある桜の木………もうそろそろ咲いていないかしら」






灯は小さく頷くと、汀の手を引いて裏庭の方へと歩き出す。






「……………?」






汀は手を引かれながら、目を大きく見開いて灯をじっと見上げた。