*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯の肩に頬を寄せ、汀はそっと涙を流し続ける。




しかしそれは、哀しみの涙ではない。







(お母さま………私は、いいのです。


父上のお振る舞いにお心を痛めるあなたのお姿を見るよりも………ずっと、この方がよかった………。



お母さまはやっぱり、お美しいままだった。



たとえ、穢れ一つ知らない幼い少女のように、夢の世界しか御覧になれなくなっているとしても………)







澄んだ瞳から流れつづける透明の涙を見つめていた母が、そっと目を上げた。






その瞳に、帳の向こうに見える黄金色の細月が映っていた。






「………今宵も、月がきれいねぇ………」






微笑みの形を崩さない唇から、言葉が洩れだす。







「…………ねぇ、知ってる?



月ってねぇ。


あんなに美しいけれど………とっても怖いんですって」