*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯は小さく舌打ちをして、堪えかねたように帳の中に入ってきた。





寄り添うように汀の隣に腰を下ろし、細い肩を抱く。





その手に手を重ね、汀は灯に微笑みかけた。







「………ありがとう、蘇芳丸。



私は大丈夫よーーー」






「……………」







灯は黙って頷いた。






その姿を見て、母は満足気に笑う。






「まぁ、あなたも………。



とってもきれいねぇ。


夜を照らす優しい燈火のようね………」






くすくすという笑い声が、乾ききった唇を濡らした。







「ーーー青と赤、水と火………。



あなたたちが並んでいると、嬉しくなるわ………。



世界は、なんて美しいのかしら」







汀は言葉もなく何度も頷いた。







(…………きれいなお母さま。


純粋な少女のような、私のお母さま。




ーーーすべてを忘れておしまいになったのだわ。


つらいことや苦しいことを御覧にならないように。




全ての冷たい仕打ちを、その美しいお心から取り除いてしまわれたのだわ)