*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「あなたは、とってもきれいね。


あなたのお母さまも、たいそうお美しいお人なんでしょうねぇ………」







「……………」







汀の震える唇から、言葉が出なかった。






痩せ細った指がゆっくりと夜着の中からのばされ、汀の目許に優しく触れる。







「あなたの瞳には、きっと、きれいなものしか映らないんでしょうねぇ………」







うっとりと囁く母は、優しい微笑みを顔に浮かべてる。






苦しいことも、辛いことも、何も知らないような、無垢な少女のような笑みだった。







美しく澄みきった笑みを見て、汀の瞳から涙が止めどなく流れだす。








「…………ええ、ええ。



私の母は………本当に美しいお人です。


私に、美しいものばかりを見せてくださいましたーーー」







汀の掠れた声が帳の中を満たした。