*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

汀が呆然としたように呟く。




「えー………と、つまり、蘇芳丸は、私に青丹丸を贈ってくれたということ?」




「…………」




「私が犬を好きだと知っていたから?」




「……………」




「そうなのね?」




「……………」





灯は何も言わずに空を仰いでいる。



しかし、否定はしなかった。






汀はじっと灯の顔を見上げていたが、ふっと目を細めた。





満開に咲き誇る花のような笑みを、惜しみなく浮かべる。






「………ありがとう、蘇芳丸。


私………とっても嬉しかったのよ」






「…………そうか」





「あなたが急にいなくなってね。


北の対は元通り静かになって………まるで火が消えたように静かだった。


私ね、毎日あなたのこと思い出して、とっても寂しかった。



そんなときに青丹丸が現れて………すごく、すごく嬉しくて、楽しくて。



ーーーーーありがとう………」