*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

群雲の洞窟がそろそろ見えてきた所で、汀が「ん?」と声を上げた。





灯が振り返ると、汀の懐に隠れていた青丹丸がぴょこんと顔を出している。






「あら………どうしたの?」






青丹丸はくんくんと鼻を動かしながら周りの様子を窺っていたが、ある方向を見てぴくりと耳を立てた。





そしてばたばたと身体を動かし、地面に降りようとする。





汀は首を傾げながらも青丹丸を地に下ろした。






すると青丹丸は一目散に駆け出した。





汀がそれを追いかけるように走り出すと、灯も溜め息をついて追いかける。







青丹丸が向かった先には、集まって遊んでいる子犬たちがいた。






「まぁ、子犬だわ!


それもたっくさん!



可愛いわねぇ………」







「……………」







青丹丸の目的に気づき、灯は嫌そうな顔をする。