*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

足を剥き出しにし、艶やかな黒髪を靡かせて走りながら、汀はちらりと後ろを振り向く。




糸萩に抱かれている露草を見て、目もとを綻ばせて灯の袖をくいくいと引っ張った。





今度は何だという嫌そうな顔で見下ろしてくる灯に、後ろを指し示して囁く。






「ねぇ、見て見て、蘇芳丸。


あの二人………」






「…………あ?」






振り返った灯は、弟分の頼もしい姿に口角を上げる。






「ふぅん………やるじゃないか、糸萩」




「ねぇ、あの二人、お似合いね」




「…………は?」




「そういえば、二人とも秋の花の名前だわ! きっとご縁が深いのね………」






嬉しそうに微笑む汀の言葉に、灯は興味なさそうに首を捻った。