*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

片手で汀を抱え、空いた手で松の枝をつかみ、ぶら下がる。




春宮と舎人たちから充分に距離をとり、ほっとしたように息を洩らした。






掴んだ枝を支点にして、大きく身体を揺らして回転した、さらに上の枝へと移る。





「きゃあ、目が回っちゃうわ!」





呑気に言う汀を無視し、灯はぐるりと視線を巡らせた。




そして、春宮の背後、近くの建物の陰にいる群雲と、弓を持った青竹を見つけ、にやりと笑った。






(………やっぱり青竹の矢か。


さすがだ、助かった………)






灯が群雲に頷きかけると、群雲も頷き返し、後ろを振り向いて手振りで合図をする。






白縫山の皆が、一斉に駆け出してきた。





「なっ、何奴!!」





ぞろぞろと出てきた侵入者たちに目を剥いた舎人たちは、慌てて起き上がり、武器を構えて春宮を守るべく取り囲んだ。






そこからは大乱闘である。