*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

裾の長い装束を着ている汀と露草は、速く走ることができない。





灯は周囲に目を配りながら、二人の前をなるべく歩幅を合わせて小走りに進む。





「………もう少し速く歩けないか」





小さく訊ねると、汀は露草を振り返った。




地面を歩くことに慣れていない露草は、小石や松の根に足をとられ、ぎこちなく走っている。




その横で糸萩がはらはらしながら見守っていた。







「………無理よ。これ以上は………」






汀は小声で灯に囁いた。




灯は頷き、松原の外へと目を向ける。





その視界に、遥か遠くでちらつく人影が入ってきた。






(…………気づかれたか?)






眉をひそめて、灯は三人に足を止めるよう手振りで示す。