*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語









「なんということだ………」





灯と汀たちが立ち去り、一人残された局の中で、春宮はゆっくりと立ち上がった。





束帯(そくたい)の乱れを直し、姿勢を正して外に出る。






そこには既に、汀の姿はなかった。






「ーーーーー逃がすものか」






低く呟くと、御所である瑞雲殿へ足早に向かう。





そこで見つけた春宮舎人(とうぐうどねり)を呼び止めた。






「………おい、お前」




「えっ、あっ、殿下!!」






男は慌てて床に膝をついて礼をした。