* 「なんということだ………」 灯と汀たちが立ち去り、一人残された局の中で、春宮はゆっくりと立ち上がった。 束帯(そくたい)の乱れを直し、姿勢を正して外に出る。 そこには既に、汀の姿はなかった。 「ーーーーー逃がすものか」 低く呟くと、御所である瑞雲殿へ足早に向かう。 そこで見つけた春宮舎人(とうぐうどねり)を呼び止めた。 「………おい、お前」 「えっ、あっ、殿下!!」 男は慌てて床に膝をついて礼をした。