*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

冷ややかな声音で吐かれた言葉に、春宮は目を剥いた。






「………何を言っておる。


私が決めたんだ、当たり前だろう!」






灯はすっと目を細めた。






「………お前が勝手に決めてどうする」






当然だが、春宮は「お前」などと不遜な呼ばれ方をしたことなど、一度たりともなかった。





あまりの無作法な振る舞いに、目の前の男を言葉もなく見上げることしかできない。






「………汀がいつ承諾した?


お前の妻になると、こいつが面と向かって言ったことがあったか」






灯は顎で汀を指しながら、静かに言う。




すると春宮は眉をしかめ、灯を睨みつけた。






「………承知、だと?


なぜそんなものが必要なのだ?


私は世継ぎだぞ、私の妻になるという光栄は、女の誰もが手に入れたいものだ」






灯は呆れたように肩を竦めると、小さく呟いた。





「話にならんな………行くぞ、汀」





灯は汀の手を引いて、妻戸をくぐって局の外に出た。