*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

そのように言われてしまうと、露草は言葉が出なかった。





(………あぁ、姫さま)





無情にも閉じられた妻戸の向こうの汀の心情を思い、露草は袖で顔を覆った。






そして、局の中では。




燈台の明かりを春宮が吹き消し、真っ暗闇の中、汀は身を強張らせる。





春宮はいささか乱暴に汀を床に降ろした。




青丹丸の入った筥は離れたところに置き、念を入れて、重しとして鏡筥と唐櫛笥を載せた。






「………さぁ、待たせたな、妻よ。



今度こそ………」






春宮の息が荒くなっているのに気づき、汀は恐怖で足が竦んだ。





唯一の出入り口である妻戸の前に春宮が立ち塞がっているので、逃げ道はない。




それは分かってはいたが、汀はなんとか逃れようと、四つん這いになってわたわたと移動する。