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両手に汀と青丹丸入りの筥を抱えた春宮は、渡殿をわたって自らの寝所に真っ直ぐに向かっている。
その後ろを、遠慮がちに、しかし付かず離れず露草がついて来ている。
しかし春宮は、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったのか、突然足を止めた。
汀と露草は驚いたように春宮の顔を見上げる。
「………もう我慢ならん!!」
そう叫ぶと、渡殿の右半分に造られた部屋、女房の居室である局に飛び込んだ。
「あっ、春宮さま、何をなさいます!!」
露草が慌てて後を追って中に入ろうとしたが、春宮はじろりと睨みつけた。
「………そこまでだ。
それより中に入ることは禁じる。
女房風情が、皇太子と女御の共寝の邪魔をするつもりか?」



