*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

近くに立てられていた几帳に身を隠しながら声をかけると、男たちが驚いたような声を出した。





「こんなところで、女房どのが何をなさっております」




「そうですぞ、いま、物の怪が出たといってこの辺りは大騒ぎになっているのですよ」




「あの……その物の怪のことなのですが」




「ほう、どうなさった」




「あちらの方に、先ほどそれらしき怪しい影が………」





卯花が几帳から手だけを出して、適当な方角を示した。




それを見て男たちは色めきだつ。





「なんと! それはまことですか!」



「よし、すぐに行って捕らえよう!」



「中将どの、弓矢の用意はよろしいか?」



「万全だ! 私の腕でそやつを射抜いてやるぞ!」





男たちはがやがやと話しながら、卯花の指が差している方へと足を速めた。