*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯が周囲の様子を窺い、近くに人がいないのを確かめると、卯花と楪葉に合図を出した。





二人は握り合った手の力をぎゅっと強め、顔を見合わせて頷きあう。




そうして、同時に駆け出した。






「気をつけろよ、二人とも」






群雲が小さく声をかけると、卯花は力強く頷いた。







二人は一番近くの建物に入ると、手近な局の前で足を止める。





中の様子を窺うように息をひそめ、誰もいないのことが分かると、さっと飛び込んだ。






ひと気のない局は薄暗かったが、几帳に唐衣(からぎぬ)と裳(も)がかけられているのが分かった。







「豪奢な着物ねぇ。


これを着ればいいかしら」





「そうだね、たぶん………宮仕えの女の人たちが着る装束みたいだから」