「姫よ、そなたはもう私のものだ。


大人しく、安心して全てを私に委ねればいいのだよーーー」






聞く耳を持たないといった春宮の様子に、汀と露草は顔を見合わせた。




今上帝の第一皇子として崇められて育った春宮には、他人の気持ちを思いやるなどという発想はないのだろう。




何もかもが自分の思い通りになると、信じ切っているのだ。





春宮の目つきと振る舞いを見れば、それは瞭然としたことだった。







露草はひっそりと溜め息を吐き出して、すっと目を伏せた。




その視界に、床に置かれた春宮の秘宝ーーー人面瘡つきの猫の膝の剥製が飛び込んできた。







(………やっぱり、だめだわ!!



大事な姫さまを、このように変わった御方にはお任せできない!!)






露草は口許を袖で隠しながら強く思った。