* 「ーーー今宵は、月が、きれいねぇ……」 鈴を鳴らしたように可憐な 、清らかな声でそう呟いて、姫君は感嘆の吐息をついた。 「まるで、絹布で磨かれた、砂金の一粒のようだわ」 銀の粉を振りまいたように星が散らばる、深い瑠璃色の空。 その中空にくっきりと浮かび上がる、陰ひとつ、曇りひとつもない鬱金色の、大きな望月。 うっとりとした表情で美しい夜空に見惚れる主君を、露草はじっと見つめる。 彼女の美しい主君ーーー『六の君』のその瞳は、月の光を受けて不思議な色合いに煌めいていた。