*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語








汀はゆっくりと褥から起き上がり、袿を肩にかけてぼんやりと天井を仰いだ。





「静かだわ………」





露草は局(つぼね)に下がっているらしく、姿が見えない。





今夜の夜伽については露草が上手く断りを入れてくれたらしく、それ以降は何の音沙汰もなかった。






汀は小さく吐息を洩らし、脇息を引き寄せてもたれかかった。






(…………私、いったい、どうなってしまうのかしら)






今日は体調不良を言い訳にして、なんとか春宮のお召しを免れたものの、明日になればそうもいかないだろう。






(いやだわ………逃げたい)





ぎゅっと目を瞑り、心の底からそう思う。





(こんなに静かなんだもの。


今なら逃げられるのではないかしら………?)






そう考えた時。





東の市で、灯が呟いた言葉を思い出した。