*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

灯はまず藤波に近づき、その肩を小突いた。






「藤波。山に戻って皆を呼んできてくれたんだな。


ありがとう…………」






「べつに、たいしたことないよ」






藤波はいつものようにひねくれた表情をしてみせたが、その口角は上がっていた。






「右大臣邸の奴らに連れて行かれただろう? よく逃げられたな」







灯が感心したように言うので、藤波はすこし苦い顔をした。







「…………逃げたというか、逃がしてもらったというか………」





「誰に?」





「六の君だよ」







その言葉に、灯は目を丸くした。