*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「………っ、矢か!?


どこからだ!?」





騒然となった男たちの間を、さらにもう一本の矢が風のように突き抜けた。





その矢は馬の顔のすぐ前を通り、馬の足元に突き刺さった。






ーーーーーヒヒーン!!!





馬は雄たけびを上げて、後ろ脚で立ち上がった。




そのため、馬の背に乗せられていた灯の身体は大きく傾いだ。






灯は手錠を掛けられたまま、足で馬の背を蹴る。




反動で跳び上がると、身軽に着地した。






男たちは興奮した馬を抑えるのに必死になっている。




その隙に灯は、一人の男の腰刀の柄を口で咥えて、鞘から僅かに引き抜き、その刃で手に巻かれた縄を断ち切った。






そうして、男たちの誰一人にも気づかれることなく、騒動のさなかから姿を消してしまった。